砂のお城

砂浜歩く指の隙間に
白い泡に乗ってくすぐる砂粒
何処かであったような気がして
何時かきみを手の中で握ったような
ふと目を落とした時には
さざ波がさらって行ってた
いつも 僕の事をくすぐって 波に消えて行ってしまう

足跡になったとたん
波の形になって
寄せては消えてく
暇さえもてあまさないで
砂のお城は今度は何になる
白い泡に乗って
とどまる事も無く何処へ行く
いつも 僕の事をくすぐって 波に消えて行ってしまう




いつも

なんだか物足りないよ 風が體を吹き抜けてく
あせりに言葉が埋もれて 只の音になってしまう
早くしないと
後ろから
迫ってくるじゃない
夜って奴が
まだ向こうに行かないで いつも指をすり抜けて
まだ向こうに行かないで いつも指をすり抜けて




かざり花

もううそはやめようよ ふたりが吐くうそが部屋をいっぱいにして
ぼくの白はきみの黒 そんなものは窓から捨ててみないか
壁に映る影はうぶにおしゃべりしてるけど
聞こえてくるのは寒いうそばかり
牛乳壜に挿した花がうんざり俯いて ふたりの足下見てる
枯れた涙がこぼれる前に
ぼくは水をかえて きみは暖かい日差しを連れてきて
それでだめならそれまでさ




かくれんぼ

もういいかい 日も暮れて 雨も降りそうです
君の声はうすく聞こえているけれど
どこに居るかはわからない
森の深く聞こえる
まだだよ まだだよ まだだよ
早く出て来なよ 遊びは終わりさ 風邪でもひいたら大変さ

もういいかい 灰色が 闇に変わって
ぬかるむ足下を掴んでくるから
ここから先には行け無いや
土砂降りが聞こえる
まだだよ まだだよ まだだよ
早く出て来なよ 遊びは終わりさ 風邪でもひいたら大変さ
早く出て来なよ 遊びは終わりさ 風邪でもひいたら大変さ




手紙

あなたが描いた 文字が 机の上で踊ってる
あなたが描いた 絵が 机の上で踊ってる
あなたがいる風景 あなたが感じた匂い
あなたの温もりを この手紙に閉じ込めて 遠くの僕に届いたよ
いつまでも新鮮に いつまでも瑞々しく 机の上で踊ってる
あなたが側に居るようで とてもうれしくなるのです




えりこ

華奢な足首が しっかりと私を支えてる
走ってしまったら 折れそうな
申し訳なさそうに 街を歩いてる
私の足首
それでも私は楽しいつもり 悲しくなんて無いのです
空惚けなこの街は嫌いじゃない 胸が苦しくなるだけです
あてのない旅に出てみたい 何処かで骨太な私が言ってます
今日も昨日と同じ朝ですか
折れてしまえ 折れてしまえ いっそのこと折れてしまえ
今日の私が言ってます




言葉

頭の中にあるもの全部 君の前に広げて
僕は見せたい 一番美しいもの
辺りを淡く染める 光の粒浴びた君と
淡紅の花がそこにはあって
やわらかいレースの中にいるみたい
心地いい風がそれを揺らす

口から出る言葉だけでは 色が足りないのです
頭を埋め尽くすすべてを 描ききれないのです

白い砂浜で はしゃいではじけた水のしぶき
光閉じ込めて 君を追いかける
空に體あずけて
心地いい波がそれを揺らす

口から出る言葉だけでは 色が足りないのです
頭を埋め尽くすすべてを 描ききれないのです




しとしと雨

しとしと雨が 君の頬を伝って
僕の體の中に 染み込んできます

からから天気の 汗ばんだ街で
君の項が 寂しくゆれる

遠くに沈む澄んだ青を見付けて空惚けて

あいつは風の中へ逃げた あいつは雲の中へ消えた
あいつは風の中へ逃げた あいつは雲の中へ消えた

とぼとぼ歩きの 君が僕の事を
白い絵の具だけで 描き消してしまう

遠くに沈む澄んだ青を見付けて空惚けて

あいつは風の中へ逃げた あいつは雲の中へ消えた
あいつは風の中へ逃げた あいつは雲の中へ消えた




雨振り

雨降りの夕暮れは 彩りを濃く包む
床も壁も光に濡れて 鮮やかにそこに居る
暗くなれば 灯りが邪魔をするから

それまで ただ何もしないで 座っていよう

雨降りの夕暮れは 香りを閉じ込める
草や土の匂いが濡れて 懐かしくそこに居る
焼けた雲がちぎれたら 空に帰っていくから

それまで ただ傘もささずに 遊んでいよう




群青

青い雫が 空に落ちて群青に滲む
夜に沈んだはずの月が うすく浮かんでいた
つめたい朝 深海が迫ってくるような魔法を見たんだ
ずっと見ていると 深い青にさらわれそうなんです
ひとりでいる心細さが心地よくて
駆け出したくて 潜りたい

息荒くゆれる展望 瞼を閉じても見える青に飛び込んで
今はひとりでいい 虚ろにそう思うのです

赤い雫が 空に跳ねて群青に染みる
山陰から 牡丹が顔をだして うすく咲きはじめた
つめたい朝 雲霧が晒され泳いで行く魔法を見たんだ
段段色が被さって すべて露にされそうなんです
誰かに見つかってしまいそうで
駆け出したくて 潜りたい

息荒くゆれる展望 瞼を閉じても見える青に飛び込んで
今はひとりでいい 虚ろにそう思うのです



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